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福岡情報

きっと外さない! 福岡“食べる”観光 ご案内3軒目 石堂橋 白つぐ

2019.06.18

福岡には九州の素晴らしい食材が集まって、美味しい食事や酒だけでなく、その雰囲気や会話を楽しめる店がたくさん。「食べることが一番の楽しみ」と言われるのも、この街らしい観光のあり方だと感じます。ようこそ、美味しい福岡へ。これから定期的に、私が好きな“笑顔になれる料理店”へご案内します。

Text / Photo トリゴエツヨシ

「山笠のあるけん博多たい」。福岡という街で「博多」は特別な思いを持って使われます。地域としては那珂川と御笠川に挟まれた昔ながらの商人の町を指しますが、地元の人が使う「博多」は、この町に暮らす “誇り”や“愛”も込めて呼ぶことが多いようです。6月に入ると、夏を迎える博多の町に「博多山笠」の正装である長法被を着た男衆の姿を見かけるようになります。山笠の本番は7月15日ですが、いよいよ迎える祭りに向けて1年を待ちわびた町中の思いが静かに高まっていくのです。今回は、そんな山笠が駆け抜ける界隈から素敵な一軒をご案内しましょう。

博多の意外な風情

写真:聖福寺-東町筋
▲店の向かいには日本最初の禅寺である「聖福寺」が。境内の一帯は国指定の史跡に指定されています。
写真:東長寺-ライトアップ
▲店の隣にあるのは「東長寺」。10月には周辺の寺社と合わせてライトアップされるイベント「千年煌夜」の会場に。
写真:入り口外観
▲昔ながらの町家のようにひっそりと。緑ある入り口をお見逃しなく。

「福岡にこんな場所があったんですね」と、驚く人も多い御供所町界隈。博多駅近くにありながら多くの寺社が集まる一画は、厳かな中に緑豊か。寺の塀沿いに細い路地を歩けば、まるで古都にいるような意外な風情を楽しむこともできます。それは博多という町が遥か千年以上も前から大陸と交流をしてきた証。今回ご紹介する『石堂橋 白つぐ』は、そんな界隈で歴史ある町並みを残す南北の路地、東町筋に静かに店を構えます。
この店で過ごす時間は界隈の風情をそのまま味わうかのよう。美しい四季を奏でる料理はいつも優しい気持にしてくれて、自分にとってのご褒美はもちろん、福岡を訪ねて来る方を安心して連れていける嬉しい一軒。そして店がある東町筋は「博多山笠」の「追い山」が駆け抜けるコースでもあり、山笠の季節になるとこの界隈に足を運びたくなるのです。

一汁三菜

写真:八寸-前菜4種
▲ランチの「ミニコース」(4000円)より八寸の前菜4種。春の日には桜を合わせる心配りが嬉しい。
写真:お造り
▲ランチの「ミニコース」のお造り。旬を迎えるイサキも炙りで。
写真:昼御膳
▲お昼の御膳(定食)は1800円〜。この日は金目鯛の煮付け(2300円)をチョイス。

ここで味わえるのは、日本料理の基本でもある一汁三菜を旬の食材で表した優しい和食。「福岡という風土だからこそ味わえる、季節の恵みで丁寧にもてなしたい」という店主・白次亮一さんの心尽しの料理の数々です。とはいえ、大将の想いをきちんと受け止める穏やかな心と少し余裕ある時間があれば、かしこまる必要はありません。そして美味しい時間を分けあえる誰かと一緒であれば、いっそう豊かに感じることができるはず。私が好きなのは、窓から木漏れ日を眺めながら食事ができるランチの時間。しっかりと時間をかけて旬を味わうなら大将おまかせのコース料理を、また気軽に季節の訪れを感じたいときは定食のスタイルで楽しめる御膳をチョイス。博多の風情を味わうランチは自分にとって癒しのひとときであり、爽やかな気持ちに整えてくれるリセット・スイッチのようなもの。昔ながらの界隈に足を運ぶところから美味しい時間を過ごす、その中で清らかな気をしっかりいただくのかもしれません。

美味しいは優しい

写真:白次さん
写真:焼き魚

▲ ランチの「ミニコース」焼き魚は季節の仕入れに合わせて。
写真:新生姜ご飯
▲この日、コースのご飯は、新生姜の炊き込みご飯。味噌汁は出汁も香る、いいお味です。

「旬の味わいは1年に1度。それぞれの食材の良さを引き出しながら、美味しさのバランスを考えています」と、白次さん。夏に脂が乗って美味しい魚もあれば、冬こそ身が締まる魚もまた旬の味覚。「特に福岡は新鮮な魚が当たり前に届くので、京都の修行中よりも旬をしっかりと意識するようになりました」と話します。季節ごと出回る野菜と魚介など様々な食材を意識して、調和させる組み合わせやバランスを丁寧に探し、美味しさを重ねていくのだそう。そうして重ねられた1つずつの旬がハーモニーとして深まる味わいこそ、まさに日本料理の真骨頂。それはメイン料理だけでなく、むしろ小鉢や脇役の付け合わせにも明らか。基本の出汁や丁寧な仕込みで主菜を引き立てていく、幾重にも重ねられた手仕事はすべておもてなしの心が成せること。美味しさで心地よくなるのは、その優しさに包まれるからに他ならないと感じるのです。

山笠の界隈で

店名にある“石堂橋”とは移転前、店のすぐ前にあった御笠川に架かる橋の名前。山笠が走り出す「お汐井とり」という行事で、七つの流(ながれ)の男衆がスタートする場所です。地域に残る伝統の祭り、その土地で料理を営む姿勢をいつでも大切にしていたいと、店名に残した理由にも思いが込められます。今年もまた山笠が博多の町を走る季節になりました。778年目を迎える祭りの、熱気あふれるクライマックス「追い山」に向けて博多の男たちの気持ちが高まる1ヶ月。祭りを楽しむ機会に合わせて、もちろん一年通して福岡の旬をゆっくりと味わいたいと思っていただけるなら、町の歴史が静かに残るこの界隈へ是非どうぞ。『石堂橋 白つぐ』の心尽くしの料理と、町のあちらこちらに残された史跡や心地よい風情を感じる散策で、日常の気持ちをリセットすることができるでしょう。

お店情報

店名石堂橋 白つぐ
住所福岡市博多区御供所町2-40
電話番号092-400-3569
営業時間12:00〜15:00/17:00〜22:00
店休日月曜日
席数46席
コース・お昼の御膳(定食)¥1,800〜
・ミニコース(7品)¥4,000
・大将おすすめコース(8品)¥6,000
【夜のお料理】
・ミニコース(7品)¥7,500
・大将おすすめコース(8品)¥9,500
・スペシャルコース(8品)¥12,000

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鳥越毅