きっと外さない! 福岡“食べる”観光 ご案内4軒目 回 kai
2019.07.01 福岡には九州の素晴らしい食材が集まって、美味しい食事や酒だけでなく、その雰囲気や会話を楽しめる店がたくさん。「食べることが一番の楽しみ」と言われるのも、この街らしい観光のあり方だと感じます。ようこそ、美味しい福岡へ。これから定期的に、私が好きな“笑顔になれる料理店”へご案内します。
Text / Photo トリゴエツヨシ
「福岡は最近、全国から注目されるスパイスカレーの街になっているんですよ」とカレー好きを自称するサイクリストが自慢げな笑顔。「カレー店を巡る観光客もいるみたいです」とも。確かに福岡には個性的なカレーショップが随分増えています。古民家の店、小さくてかわいらしい店、アパートの一室を改装した店、路地に隠れた店など、その存在がすでに個性を主張するかのようなカレーショップが続々とオープン。確かにお店めぐりも楽しいはず。そんな福岡の街で20年、お茶とお酒の店なのにカレーをめがけて人が訪れるユニークな店。それが今回ご紹介する『回 kai』です。
バー&カフェwith カレー
私が『回 kai』に足を運ぶのは、気分的にゆっくりしたいとき。ウイスキーや日本酒、ワインなど、その日の気分で酒を頼んではオーナーの佐野敏彦さん・いずみさんご夫妻と話をしながらまったり過ごす、バーとして使うことが多い気がします。場所は薬院大通り交差点からすぐ。別の飲み会の帰りに立ち寄るのにちょうどよくて、ちらっと足を運んだら世間話をして家路につく流れ。 店の装飾がさりげなくアートで、流れる音楽や穏やかな会話も『回 kai』で過ごす時間は“品のあるゆるさ”というか、佐野さんご夫妻のお人柄に包まれて心地いいのです。 そんな二人の作るカレーが美味しいことはずいぶん前から実食済み。この機会に、お酒とお茶をまったり楽しめるスパイシーな店として『回 kai』の魅力をお伝えできたらと思います。
地元とつながる出張カレー
先日、足を運んだら「大牟田で出張カレーのイベントをしたんです」と笑顔のいずみさん。詳しく聞いてみると、イベントの場所を提供してくれたのが『taramu』という大牟田で人気の小さなカフェ。『回 kai』らしいスパイシーなカレーを、さらに地元食材を活かした“ちくご風”にパワーアップして提供するイベントは大人気で、平日にもかかわらず行列ができるほどで嬉しかったという話。加えてカフェのオーナーが、なんと小学校時代の同級生だったことが初めて分かったのだと、繋がった縁に驚いたそう。私も話を聞いて、知り合いのオーナー同士が町を超えて繋がったことに嬉しくなりました。
今日の「スパイシーカレープレート」は、その美味しさを再現した“ちくご風”とのことで、早速オーダー。カレーはオーダーごとに作ってくれるので提供されるまでの間、クラフトビールで待つことに。柔らかな泡に爽やかな味わいの「常陸野ネスト ホワイトエール」で心地よい時間の始まりです。
『回 kai』らしいカレー
最初に出される鶏ガラと野菜でとった出汁を使ったスープは、スパイスオイルを混ぜながらいただくスパイシースープ。優しさの中に食欲をかきたててくれます。続いて添加物の入っていないオリジナルドレッシングのサラダを食べるとカレープレートの登場です。キッチンから放たれる香ばしさを感じながら待ち遠しかった「スパイシーカレープレート」は、定番のスパイシーチキンカリーに、瀬高産とうもろこし入りレンズ豆カレー、筑後地方でお馴染みのもろみ「しょんしょん」を隠し味に使ったキーマカレーという3種のカレーを1つの皿に、ボリュームも十分なプレートです。
スパイシーチキンカリーは、塩麹漬けした鶏肉をあめ色まで炒めた玉ねぎと焙煎したガラムマサラたっぷりのルーで煮込んだ、コクとスパイス感が安定の美味しさ。レンズ豆のカレーはマイルドな風味で、気になるキーマカリーは、みやま市のマルエ醤油が製造する地元のもろみ「しょんしょん」と実山椒を隠し味に、塩麹漬けした挽き肉と瀬高産のナス、えのき茸、新玉ねぎをスパイスたっぷりのルーで煮込んだ中辛の味付け。
これら3つの味の食べ比べも楽しみながら、さらに『回 kai』らしいなと思うのが、カレーを囲む多彩な副菜です。うきはの人参を使ったスパイスしりしり、紫蘇のグリーンチャツネ、瀬高のセロリとナスのアチャール、有明海苔のチャツネなど、単品でも美味しくてカレーと一緒だと味わい深くなる副菜を6種も用意。「ちくごの食材ってすごいんですよ」と、いずみさんは地元愛をカレーにたっぷり注いでくれていたのです。ご飯は普通盛りでもお腹いっぱい(笑)。様々な副菜はカレーのお供でもあり、お酒のお供にもなるのです。
食事中からハイボール
「スパイシーカレープレート」のラストオーダーは21:00。食事とお酒を楽しむ時も、お酒だけのひとときも、この店でやっぱり嬉しいのはお酒のメニューが多いこと。佐野さんは大名にある『BEM』というスタンディングバーのオーナーでもあり、気軽な立ち飲みでハイボールや希少なジャパニーズウイスキーを楽しめるという空間も提供。そこで楽しめるウイスキーへのこだわりを知れば『回 kai』のラインナップも納得の嬉しさがあるわけです。この日、カレーを楽しみながら選んだのは「富士山麓」のハイボール。今年、ウイスキーファンから惜しまれながら販売終了となってしまったキリンブランドのウイスキーを棚に見つけて、即オーダー。「飲み干したらもう飲めなくなりますねぇ」と、美味しいハイボールを飲みながらお互いに残念な顔。飲めるときに楽しむのも酒の美学とばかりに、美味しさをお代わりしつつ、時が過ぎていくのです。
この店に度々足を運んで思うのは、店は変わらないけど常に新しい気がするということ。それは二人の興味が広がり続ける、ユニークな現在進行形の賜物かと。バーであり、カフェでもあり、人としてもスパイシー。二人が楽しいと思った何かが店の空気に醸される。客もそれを心地いいと感じながら小さな刺激を受けるのだろうと思います。そう、元気な福岡の街で静かに愛され続ける『回 kai』らしさは、カレーブームとは違った理由があるのだと改めて感じるのでした。
お店情報
店名 | 回 kai |
住所 | 福岡市中央区薬院3-13-20 |
電話番号 | 092-525-4027 |
営業時間 | 12:00〜14:30/18:00〜23:00 ※フードのラストオーダーは21:00 (金曜は夜のみ・日曜は昼のみ営業) |
店休日 | 木曜日 |
席数 | 24席 |
フォトギャラリー
鳥越毅