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特別企画

スパイ小説に学ぶ観察眼(シーズン3)

2019.05.16
写真:Fun Nmi Lnu

こんにちは。連載の波に乗ってきた児島です。
スパイ小説に学ぶ観察眼シリーズ。さっそく3回目の開講です。最初にお断りしておきますが、今回の記事にWebの話はまったく出てきません。

Fun Nmi Lnu

急に言われても何のことかわからないですよね。

  • ファーストネーム・アンノウン
  • ノー・ミドルイニシャル
  • ラストネーム・アンノウン

の略です。

スパイというのはその特質上、潜伏先で目に見えない影のような存在として活動することを余儀なくされます。

人の子である以上、本名はあるにせよ、任務遂行のため偽の経歴を身にまとい自分に与えられた役割を邁進する。

その任務の過程で仮に死んだとして集合墓地に葬り去られる刹那、墓碑銘にこの「Fun Nmi Lnu」が刻まれたらそれはスパイにとって最高の名誉であると、この小説では定義しています。

偽の名前はおろか、本名さえ誰も知らない。
まさに影のような存在として最期を迎えるのです。

名前だけでなく、外見についても触れてみます。

「中肉中背。そして色白の涼しげな顔」

ここでご紹介しているジョーカーゲームに出てくるスパイ養成学校のメンバーは、そのほとんどが、中肉中背そして色白の涼しげな顔という表現をされています。

先ほども述べましたが、スパイというのはその特質上、目に見えない影のような存在として活動することになります。外見的に大きく目立つ要素があってはならないのです。

ここで私の話に置き換えます。
外見的に私はスパイに向いているでしょうか。

たぶん中肉中背。たまに電気グルーブの石野卓球に似ていると言われることはありますが、それを除けば、大した特徴もなくどこにでもいるような外見をしていると思います。

よく知らない人にどこかで会ったことありますよねと声を掛けられるのは、言い方を変えれば、そんな外見の私が急に消えたとしてもそういえばそんな人もいたかしら?と思わせることができるということです。

ただし一点。

私が本気でスパイになるためにはやらなければならない偽装があります。それはアゴの横にあるホクロを消すこと。どんなに些細であっても念には念を。スパイの鉄則です。

話は脱線しますが、私は中学3年の夏休み、40日間もある長期休暇を利用してそのホクロを自分自身のオペで排除しようとした事実があります。

ライターの火で安全ピンをあぶり、ホクロの端っこの方から少しずつ皮膚をエグっていきました。結果としてその大きさは半分くらいになりあまり目立たなくはなりました。

でもきっとこのスパイ養成学校の門を叩くにはまったくと言ってよいほど、甘すぎる成果物だったでしょう。

一枚目・二枚目・三枚目とスパイ

一枚目二枚目三枚目とはもともと、歌舞伎から発生した言葉です。前回の記事でスパイ養成学校D機関の訓練内容に「歌舞伎の女形を招いての変装技術」というものをご紹介した手前、今日はそのへんの話をはさみます。

  • 一枚目:物語全体における主役
  • 二枚目:色男の役で、物語の色恋沙汰に関与する役
  • 三枚目:お調子者の位置付けで周囲を楽しませる役

それぞれのスパイが本来どういう性格を持っているかはわかりませんが、自分の課せられた任務を遂行するため、時には目立たないように一枚目の顔を覗かせる。そうしたかと思うと次の瞬間には、二枚目の雰囲気を醸しだす。そして仮に自分に危険が振りかかりそうになると、さぞあたりまえのように三枚目の一面を表現する。

彼らスパイは、自分が何者であるかを知る必要がなく、もしかしたら自分自身にすら興味がない生きものなのかも知れないのです。異常なレベルで物事を冷静に俯瞰してみることができるのはその関係かもしれません。

ということで最後に、私の大好きなジョーカーゲーム結城中佐の言葉をお送りして終わりたいと思います。

「スパイとは畢竟(ひっきょう)=つまるところ、その存在を少しでも疑われた時点で終わりだ。疑われているスパイに一体何の意味がある」


LCT編集部