スパイ小説に学ぶ観察眼(シーズン8)
2019.07.25こんにちは。最近冒頭の挨拶が淡白気味と噂の児島です。
さて「スパイ小説に学ぶ観察眼」シリーズ。第8回目の開講です。
ここまで読んでくだされば、みなさんすでにスパイ予備軍といえます。笑
では今回もさっそく進めてまいりましょう!
日本のイメージとは
この連載記事で題材にしているスパイ小説「ジョーカーゲーム」は昭和12年以降を舞台にした作品です。
日本に潜伏した外国人スパイを捕まえるというストーリーの中で、疑いの掛かったその外国人スパイが憲兵隊に自宅を捜索される場面があります。彼はそのやり取りの中で日本という国の文化についてこのような単語を発するのです。
- ゲイシャ
- フジヤマ
- ハラキリ・ショー
スパイにかぎらず、日本にやって来る外国人は当時から日本文化を事前に調べて来日していたと予想します。パっと思い浮かぶところだと杉田玄白、解体新書のような感じの「ジパング解体書」みたいな書物によって。
ゲイシャ、フジヤマの説明文ならなんとなくイメージはつきます。ですが、ハラキリという行為を当時の書物がどのように説明していたかと考えた場合、日本人の思想と深く結びつけた書き方をしていた気がするのです。
そしてその外国人スパイは、もし証拠が見つからなかったら事前に調べていたあのハラキリが目の前で見られることに興奮し、「ショーだ、ショータイムなのだ!」と大きな声で叫びます。
結局彼は、まさか見つけられるはずはないとタカをくくっていた場所を捜索されたことで証拠を見つけられ捕まってしまいます。
外国人にとっては「ハラキリ・ショー」だったのかもしれませんが、翻って日本人が「ギロチン・ショー」などと言いながら興奮する光景が浮かぶかといったら答えはNOです。
私はこの場面を見るたびに、日本とは、日本人とは一体どのような感じで海外へ紹介されていたのだろうといつも関心が湧くのです。
文化の違いを受け入れる
考え方の偏った人間にスパイは務まりません。
なぜならスパイ活動とは、複数の文化への対応力が肝になるからです。
「これは絶対にこうなんだ」
そんなことを言っているあいだに敵国のスパイは何歩も先を走り、これでもかというほどたくさんの極秘情報を入手し、自分の国へ暗号文を打電していることでしょう。
潜入した国の文化を知る。そして受け入れる。
潜入はしなくても関わる国の文化を知る。そして受け入れる。
そういった姿勢があたりまえにないとスパイは務まらない。みんなで一緒にスパイになりましょうと言いたいわけではありませんが、我々はこの柔軟さを見習うべきです。
目と耳から情報を仕入れる
少し話はズレてしまうかもしれませんが、私はこの連載を執筆するにあたり、Amazonの提供する朗読・音声配信サービス「Audible」の利用をはじめました。
今のところAudibleは配信している作品数がまだ少ないのですが、今回の題材にしている「ジョーカーゲーム」シリーズは4作品すべてがたまたま揃っていたのでラッキーでした。
文字から入ってくる情報で構築していた作品の世界観に朗読が加わることで、ジョーカーゲームはより深みのある小説として私の中に記憶されました。やはり私はこの作品が大好きです。
朗読をソロで聴くのもいいでしょうし、読みながら聴くというのもオススメです。では今回はこのあたりで終わります。また次回お会いしましょう!
「スパイ小説に学ぶ観察眼 」シリーズまとめ読み!
LCT編集部