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特別企画

スパイ小説に学ぶ観察眼(シーズン10)

2019.08.29

写真:スパイ小説に学ぶ観察眼

こんにちは。連載担当の児島です。
「スパイ小説に学ぶ観察眼」シリーズ。とうとう今回で最終回となります。

今までお付き合いいただきありがとうございました。歌手のディナーショーよろしく、読者の方のテーブルをそれぞれまわり握手のひとつでもしたいところですが、サヨナラの余韻に浸る暇もいれず、さっそく本題に進んでいきましょう。

スパイ×Web

この連載を始めた当初正直、10回も続くのかな……3回くらいでネタが尽きるのではないかと思っていたのですが、あの手この手で何とか10回分の記事を完遂させられそうです。

とはいえこのメディアの特質を考えた場合、Webという要素をもう少し入れるべきでしたが、そこまでの情報整理に至れなかったのは反省点です。「スパイ×Web」新しいジャンルではありますね。

ではあらためて、今まで書いてきた記事の振り返りです。

  • 1回:スパイはビジネスパーソンとして優秀。
  • 2回:スパイの厳しい訓練。死ぬな、殺すな。
  • 3回:目立たない存在として生きる。
  • 4回:そこでしか使えない常識。
  • 5回:誘惑と甘言。スパイの人脈形成。
  • 6回:スパイの仕事内容。スリーパーの存在。
  • 7回:スパイにかぎらず皆他人を欺き生きている。
  • 8回:戦時下における日本文化のイメージ。
  • 9回:一度見て覚える。記憶の階層化。

何か気になる記事があればこちらから覗いてみてください。
https://lctmag.media/tag/spy/

そして最終回の今日ですが、この連載の題材にしたスパイ小説「ジョーカーゲーム」その主人公である結城中佐というキャラクターに迫って終わります。

憧れの結城中佐

第1回目の記事にも書いたのですが、ここであらためて結城中佐のご紹介。

陸軍中佐。50代年配。常に無表情で感情を表に出さない。底知れぬ頭脳と冷淡にして冷酷な言動から「魔王」の異名で恐れられる。かつては優秀なスパイとして長年に渡り、敵国に潜伏し日本陸軍に有益な情報を多くもたらしたが、彼を恐れた仲間の裏切りにより敵に捕らえられるものの、隙を見て敵の情報を盗みつつ脱走した。捕縛中に受けた拷問で片手を失い、現在は義手を付けている。
普段は右手に白い革の手袋をし、杖をついて左足を引きずるような歩き方をしているが、歩行には何の問題もなく義手も左手であるなど、すべてが敵(および味方)に対するフェイクである。陸軍幼年学校および士官学校卒業生の名簿に『結城』という名が無かった事実から、名前も偽装の可能性がある。

Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/
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時代によって細かい変動はあるようですが、日本陸軍においての基本階級は以下のとおりです。

  • 大将(General)
  • 中将(lieutenant colonel)
  • 少将(Major General)
  • 大佐(Colonel)
  • 中佐(lieutenant colonel)※
  • 少佐(Major)
  • 大尉(captain)
  • 中尉(lieutenant)
  • 少尉(second lieutenant)
  • 見習士官(third lieutenant)
  • 以下、一隊員的職位が続く

ここで注目したいのは、真ん中ほどの階級であるルテナン・コロネルの結城中佐が上長的立場の人間の制約をほぼ受けずに、この小説の中でスパイ養成機関「D機関」を設立・運営できたことです。

結城中佐はなぜ一人で立ち上げられたのか。邪魔する外的要因をどう処理したかまで触れていません。ただそこは、自身の長年におけるスパイ活動で得た知識・見識や、彼の名言である「とらわれるな」の観点から、キーマンと思われる誰かを味方につけ実行に移したのだろうと予想します。彼は優秀なビジネスパーソンなのです。

ジョーカーゲームは約20個の短編小説の集合体ですが、その半分くらいのスト ーリーに共通する場面があります。

登場人物の二人が、「どうやら日本陸軍にD機関と呼ばれるスパイ養成機関ができたらしい」というやり取りをおこなうその場面です。そしてD機関の存在を知った彼らがその情報に影響を受け、ある行動を起こすことでストーリーが展開していくのです。

スパイとは本来その存在を知られてはならないはず。それなのにそういう情報が流れてしまうこと自体、何か不自然。そこで私は考えました。

これはもしかして結城中佐の戦略において、しかるべきタイミングで結城中佐自身がその情報を流しているのではないかと。その結果、ストーリーが結城中佐にとって有利な方向へ展開していく。……やはり彼は、どこまでいっても優秀なビジネスパーソンなのです。

ここぞというときにしか結城中佐が現場に姿を現すことはありません。そんな結城中佐の在り方に憧れを感じたりします。

最終回において、彼にこれだけ触れられたのはとても嬉しいことです。今後の人生でもし何かに行き詰ったら、結城中佐の言動にあらためて触れ、都度軌道修正していこうと思います。

ではこのあたりにて、「スパイ小説に学ぶ観察眼」は終演といたします。最後までご覧いただきありがとうございました。


LCT編集部