スパイ小説に学ぶ観察眼(シーズン5)
2019.06.13こんにちは。有刺鉄線の画像になぜか懐かしさを感じる児島です。
「スパイ小説に学ぶ観察眼」シリーズの第5回目。さっそく、はじめてまいりましょう!
スパイの人脈形成
スパイとは戦時下にかぎらず、(仮想)敵国に潜入し、国際社会において自国が有利となる情報を持って帰ることを課せられた人のことです。
本記事で題材にしている小説「ジョーカーゲーム」では、敵国に潜入したスパイたちがまずおこなうのは、人脈をどうやって作っていくかの検討です。
スパイの求める人脈とは、何でも語り合える気の置けない仲間、などではありません。冒頭で書いたように、国際社会において自国が有利となるような情報を持ち帰るために協力してくれる「ダレカ」です。
そしてそのために必要となる道具が、誘惑、そして甘言です。
誘惑と甘言
あらためて言葉の意味を定義します。
誘惑:心をまどわせ、悪い道へさそいこむこと。
甘言:相手の気持ちをさそうように、うまくいう言葉。
誘惑:心をまどわせ、悪い道へさそいこむこと。
甘言:相手の気持ちをさそうように、うまくいう言葉。※出典元:三省堂「大辞林 第三版」
誘惑と甘言を柔軟に使うことで、最終的に相手の弱みを握ることへ繋げます。相手の弱みを握る目的はもちろん、その相手をこちらの意のままに動かすためです。
ジョーカーゲームに登場するスパイたちが相手の弱みを握るために使う方法の一つに、「出生の秘密を暴く」というものがあります。
たとえば、純日本人と思っていたあの人が、実はどこかの国との混血だった。
平時においてはそこまで関係ないのかもしれませんが、こと戦時下においては、他国との混血はいろいろな意味で火種になり得ます。その二国が敵国同士であればなおさらです。スパイたちはその絶好の餌を決して逃さないのです。
さて、ここまでご紹介したスパイの人脈形成、そして誘惑と甘言。
その進め方や方法は違いますが、現代を生きる我々にも通じる部分が大いにあるなと多くの方は感じているのではないでしょうか。
長いこと社会人生活をしていると、誘惑と甘言に弱いタイプの人は顔を見ればなんとなくわかります。
私がそういう人と距離を置くようにしているのは、自分自身を守るためです。誘惑と甘言のあとには得てして、不幸な結末が待っているものです。
犯人は意外な人物だった
ここからは余談ですが、前出した「出生の秘密を暴く」の話を書いているあたりで一つのエピソードを思い出しました。ある知人の話をしたいと思います。
彼は30歳を目前に転職をしました。
30歳の男性が転職するというのは本人にとっては一大事だったはずです。
入りたいと思っていた会社は面接が3次まであったらしいのですが、2次面接と3次面接のあいだに、なにやら自分の素性を調査しているらしい男の影を感じた彼。
てっきりその会社の雇った探偵みたいな人間が自分のことを調べているのだと、彼は思います。ちなみに彼の住んでいる地域はとても閉鎖的らしく、外部の人間を入れたがらない気質があるようでした。
なんだよ。そういうとこかよ。
彼はそこで希望するその会社に対して少し熱が冷めてしまったようです。ただ彼は並行して、もう一つ大きな転機を迎えていました。それは結婚です。
転職が決まったら結婚しようなのか転職するから結婚しようなのか、どちらの理由かは忘れてしまいましたが、彼は転職と結婚を同時期に行おうとしていたのです。
そこで先ほどの探偵らしき男の登場となります。
あらためていうと、「彼の住んでいる地域はとても閉鎖的らしく、外部の人間を入れたがらない気質」があったのです。その土地の気質は、きっと企業でも家庭でも近いことでしょう。
実は彼の素性を調べていたのは、婚約相手の女性のお母さんだったのです。私がその話を聞いたのは酒の席だったのですが、オチがツボに入りすぎて、その日の酒は特別に旨く感じたものでした。
人は生まれた環境に大きく依存します。私個人でいうと、そういう外部とか閉鎖的といった種類のものは別に話題にするまでもない普通のことなので、忌み嫌うような気質があまり理解できません。
ただそういうものが理解できない自分だからこそ、転職&結婚を並行にやった彼の話がどこか遠い世界のおとぎ話的に聞こえ、大いに笑えたのかもしれません。
ということで、ずいぶん話は逸れてしまいましたが、今回はこれで終わります。
「スパイ小説に学ぶ観察眼 」シリーズまとめ読み!
LCT編集部