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特別企画

スパイ小説に学ぶ観察眼(シーズン9)

2019.08.08
写真:暗い部屋

こんにちは。 単発記事より連載が得意な児島です。
「スパイ小説に学ぶ観察眼」シリーズ。第9回目の開講です。

次回で最終回となるため、今日はイブとでも名付けておきましょうか。
ではさっそくまいりましょう!

記憶と忘却

見聞きした情報が一度で記憶できればどれだけラクか。そう感じた経験はありませんか。もしそれらが叶えば必要なときにその記憶した情報を即座に取りだし、最短の時間で物事を処理できる。こんなにいい状況はありません。

以前記憶に関する専門書で読みました。

人間は完全に忘れているのではなく、思い出すきっかけを知らないだけ。
つまり人間は、一度見聞きした情報は厳密には忘れているわけではないというのです。訓練次第で思い出すことも可能になるとそこには書かれていました。

Webサービスで有名なEvernoteのロゴマークにゾウが選ばれた理由は、西洋のことわざにある「ゾウは決して忘れない」に由来しているようです。
我々も象を目指し、訓練を受けると人生が変わるかもしれません。

すべてを記憶する

以前どこかの記事で書いたのですが、記憶はどれくらいの時間スパンで忘れられていくかについてを、エビングハウスという心理学者が「忘却曲線」で発表しました。エビングハウス氏は中期記憶・長期記憶と呼ばれるものにフォーカスしています。

この連載記事の主役であるスパイたちにおいてもきっと、この中期記憶・長期記憶といった種類の情報を、臨機応変に使いわけ任務にあたっていたはずです。

「ジョーカーゲーム」に登場するスパイ養成学校の試験風景にこんな記述があります。

世界地図を広げてサイパン島の位置を尋ねられる。
だが実はその地図からは巧妙にサイパン島が消されていた。
受験者がその旨を指摘すると、今度は広げた地図の下、机上の品物を訊かれる。
受験者はインク壺、本、湯飲み茶碗、ペン二本、マッチ、灰皿……。
十種類ほどの品をすべて正確に答えた上に、背表紙に記されていた本の書名から吸いかけの煙草の銘柄まで当てて見せた。
かつ建物に入ってから試験会場までの歩数や階段の数を正確に答え、問われもしないのに途中の廊下窓の数、開閉状態、さらにはひび割れの有無まで指摘した。

フィクションなので実際にここまでやれる人はいないでしょうが、観察眼&記憶力という意味で、よくそこまで覚えていますよねと言いたくなる知人が何人かいます。きっと彼らは我々と違った視点で世界を見ているのだといつも感じます。

記憶する階層

スパイは敵国で捕まるリスクをいつも抱えています。もし捕まれば、そのあとに待っているのは拷問です。自国の機密事項、今まで築き上げてきた人的ネットワーク。過酷な拷問とはいえ、それらの情報を知られるわけにはいきません。

階層化された意識の最下層、つまり死ぬまで引き出されることのない一番奥にもっとも重要な情報を叩きこむ。記憶する階層、本音と建前、芝居と演出、それらを巧みに使いわけスパイたちは自分に課せられた任務を全うするのです。

では今回はこのあたりで終わります。最終回は「ジョーカーゲーム」の主役である結城中佐の素性に迫って終われたらいいなと考えています。


LCT編集部